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塩味ビッテン
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イヤダイヤダ。こんな小説に涙して危うく5点なんかつけた自分が一番嫌だ。
 古今東西、子供と動物による泣かせ物語は幾万とあることは熟知しているはずで、こんなチープなネタで、こんな鉄板なネタで、こんな凡庸なテーマで泣き落とされるものかと自負しているつもりであるのに、滂沱の涙とともに読み終えて 言う自分がイヤダ!!!!

 いまや大売れっ子作家である原田マハですが、私個人としては処女作「カフーを待ちわびて」以来2作目。カフーの出来のよさは大いに認めるものの、そのあざとさ、読者の弱点(欲しいところ)に気持ちよくストライクボールを投げてくる卑怯なところに違和感(嫌悪感)を持っていて、今ひとつ好きになれない感じがあったのです。プロの作家たるもの読者に迎合してはいけません。「こうなってハッピーエンドを迎えたらなあ」と思う読者を裏切ってなおかつ納得のエン ディングを用意するのがプロの腕。

 この作品「一分間だけ」はいい作品です。文章は読みやすく、ストーリー展開に飛躍はなく、無理な事件や、ご都合主義なプロットはなく、実に無難なストー リー展開でかつ読者をいい気持ちで泣かせてくれます。この優等生な作風にオブジェクション!!!!(と半ばやっかみですが)

 主人公・葵はファッション誌編集員のバリバリのキャリアウーマンで恋人と同棲中。雑誌の企画で取材に訪れたペットショップで、リラという子犬のゴールデン・レトリバーと出会い飼い始めるところから、リラ死ぬまでを描いた物語。リラのために都心から郊外まで引っ越したり、仕事も速めに切り上げざるを得なかったり、睡眠不足になったり、恋人に浮気されたりと苦労の耐えない葵ですが、「お犬様愛」で頑張るのです。しかして最愛のリラが癌に侵されて死んでしま います。

 敬愛するefさんの書評にもありますように
『もう、「泣かせてやる」というのがありありと分かるテーマで、非常にベタな作品なわけですが……「犬派」の 私としては、分かっていながら不覚にも涙が出てしまったわけです』。

 猫派の塩味としても、分かっていながら不覚にも涙が出てしまったわけです。原田マハ上手 すぎです。

ペットロス物語は「泣け泣けさあ泣けソラ泣け今泣け、泣かないと人非人だぞ」という意図がミエミエで非常に不快なんですが、不覚にも泣いてしまう自分が、返す返すも修行不足で情けない。

 こんなまったくベタな作品、ステレオタイプの展開、目新しさゼロ.小説としては御伽噺レベルの普遍的な話なのに、読者の涙を搾り出す原田マハ様の、ファンになりそうで、これまた悔しい。5点か0点のどちらをつけようか迷ったけど、泣いた私の負けを潔く認めて5点です。
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塩味ビッテン
塩味ビッテン さん本が好き!1級(書評数:2220 件)

「本を褒めるときは大きな声で、貶すときはもっと大きな声で!!」を金科玉条とした塩味レビューがモットーでございます。

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この書評へのコメント

  1. magamin10292018-07-19 18:21

    あれ? 塩味さん、キネマの神様の書評をあげていませんでしたか?

  2. 星落秋風五丈原2018-07-19 20:41

    こんばんは。これ台湾映画になってました。やはり犬がけなげでした。ヒロインが割を食っていたような。

  3. 塩味ビッテン2018-07-20 09:23

    magamin1029さん:このレヴューは昔書いたもののストックですので時代的に前後がありおます。ご心配かけました。まだボケていません。

  4. 塩味ビッテン2018-07-20 09:24

    星落秋風五丈原さま:そうですよね「ハチ公物語」や「南極物語」でも主役が犬ふぜいに喰われて気の毒ですね。「マリリンに会いに」もそうだったっけ。

  5. No Image

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